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Uni. + diary = Unikki

「解釈」と「音楽解釈学」

内輪でやっている某勉強会で,ここ最近佐々木健一『美学辞典』を扱っています。

美学辞典

美学辞典

芸術学やら美学を専攻するだいたいの学生は,参考書としてこの辞典を買う(と私は信じている)のですが,この本は通読する類のものというよりは,勉強していて何か気になることがあるとその都度参照する,みたいなのが正しい用途のような気がしています。実際に,これまで私も幾度となくこの本を参照し,重宝してきました。一方で腹を括って深く読み込んだことはありません。ということで,今回の勉強会では,この辞典から一人一項目選んで発表してゆくとになりました。グエッ。

 

発表の1回目では,友人が「かたち」の項目の要約と「ロシア・フォルマリズム」について扱ってくれました。第2回目は私が当番。どの項目を選んでもよかったのですが,佐々木先生が音楽について多少なりとも触れている項目を選んで吟味するのが面白いかなーと思い,「解釈」の項目を選んでみました。

 

前置きが長くなりました。・・・先週の発表で使用した参考文献を紹介しようと思ってこのエントリーを書き始めたわけです。

さしあたって読み始めたのがガダマー『真理と方法』。

真理と方法 1 哲学的解釈学の要綱 (叢書・ウニベルシタス)

真理と方法 1 哲学的解釈学の要綱 (叢書・ウニベルシタス)

2巻が面白かった。あとはこっちも。

哲学・芸術・言語―真理と方法のための小論集

哲学・芸術・言語―真理と方法のための小論集

残念ながら,ガダマーの著作は手当たり次第に読んだだけに留まり,当の発表では殆ど使えず。

 

というのも,例の『美学辞典』の「解釈」の項(の特にⅡ)は,実はあまり「解釈学」の概念史の流れを追っているわけではないためです。特に同化メカニズムにおけるパース「解釈項」の話に大きく紙面が割かれていて,その辺を理解するためには,こっちの論文とかを参照したり。

講座 美学 (3)

講座 美学 (3)

三巻に収用されている3「芸術記号論」。エーコ記号論』を踏まえていないと,佐々木先生の「解釈」の項は読めなかったりするので,大いに参考になりました。また同書に収用されている2「解釈学」(眞鍋將)は,むしろ佐々木先生が「解釈」の項ではそれほど詳細に触れない,シュライエルマッハーからガダマーへ繋がるような,「解釈学」のある種「概念史」が,分かりやすく(でも読むには根性が要ると思う)まとめられていました。

ちなみに佐々木先生の「解釈」の項目では,パース「解釈項」における「無限の連鎖」という話から,音楽における「演奏解釈」の話が続く。

…が。

「音楽解釈学」って別にあるよね,というのが今回の発表のもう一本の柱。主にクレッチュマーやアーノルト・シェーリング(の「詩的理念」!)から,マーラー研究におけるフローロスに至るような,「音楽解釈学」という系譜の話。

音楽美学入門 (1981年)

音楽美学入門 (1981年)

これはもう本当に文献がなくて,NGを引っ張り出して来たり,国安先生の著書にお世話になったり。シェーリング以降,通俗的な楽曲解説のレベルになってしまったとされる「音楽解釈学」も,クレッチュマーにおける学問的態度は評価されるべきであるという見方や,当時「客観的」とされた音楽分析や「音楽内的な」思想としてのエネルゲーティクとは,まったく別の方向を示す流れとして「解釈学」の台頭を捉えることも可能だと知ることができたのは収穫でした。(←日本語長・・・)

なんにせよ「音楽解釈学」は文学研究における「解釈学」とはかなーり脈略を異にしています。クレッチュマーは18世紀の「情念論」を音楽理解の手法として復活させるために解釈学を持ち出してきているわけですが,まあそれは「解釈学」の系譜とはぶっちゃけあんまり関係ないよね,というお話。

そういうわけで,どうにもこうにもまとめようがなくなってしまった訳です。まとめが「まとめられませんでした」とかいう,改めてこんなトンデモナイ発表にお付き合いくださいました皆さんありがとうございました。なんかまあ,楽しかったです。